Ato-rium*

旅とアニメが好き。アニメ「放課後のプレアデス」を応援しています。

劇場アニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」ざっくりと思ったこととか

もともと見に行く予定ではあったんですが、公開日にじわじわ流れてくる感想を見て変に他の感想の影響受けないうちに観に行きたいやつだな…となったので結局初日に観に行きました。田舎にも公開初日に来る劇場オリジナルアニメ映画は貴重。

そんなわけでTwitterで流れてくる感想を見て思ったこととか。

(以下ネタバレ注意)

原作との変更点について

実は原作(の劇場公開版)は、数年前に当時監督のHPで公開された際*1に見たことがあります(しかし、正直なところ内容は若干記憶から抜け落ちている…)。 

今回のアニメ映画化に際し、変更点としては主に2点が挙げられます。

  1. 原作では小学生であったものを中学生に変更
  2. 「もしも玉」の存在

この2点については、個人的には成功だったと考えています。

1については、中学生としたことによって、作中の「かけおち」が成功するか成功しないか、の不確実性がより明確になったと思います。 小学生というまだ親の庇護下に置かれている立場では、「かけおち」は当初から完遂が不可能であると分かっていた(視聴者側から見ても作中人物の立場としても)でしょうし、逆に高校生では変に生々しさが生まれてしまい、幻想的な作品の雰囲気に反するものになったでしょう。

2については、原作が元々テレビシリーズの中の一作であり、「if」として2通りの分岐を持つという制約が存在していた*2という背景を考える必要があります。

もはや当初の制約が存在していない今作においては、物語上での選択肢が複数あるということについてなんらかの意味づけが必要となりました。意味づけがないままでは、なぜ結末が複数存在し、それが物語においてどのようなシステムの元に成り立つものなのか?が不明となってしまうからです。その結果として用いられた「もしも玉」によって、典道が「なずなと一緒にいられる世界」を選択したいという意思の元に能動的に行動したのが明確になったところが面白いところです。

また、花火が平べったい世界/丸い世界を画として見せることによって異なる選択肢の世界に来たことを示していたのがアニメならではの表現であり、印象的な場面でした。

各所で言われていることについて

さて、初日に鑑賞した後ざっとRTなどで流れてくる感想を一通り眺めて、正直なところ思ったよりも批判意見が多いな…と感じました。

1.声優陣について

個人的にはこれは言われているほどあまり気にならなかったのですが、これはもともと私があまり気にしないたちだというのが大きいです(明らかに商業的な理由で本職が演技ではない人が起用されていたり、メインの声優陣に対して扱いが明らかに大きすぎるキャストがいたりしない限りよっぽど演技がひどくなければ気にならない)。

ただ、宮野真守さんをはじめ普段アニメの一線で活躍している方々が、今作のような実写の傾向に近いような抑えた演技を求められる作品において、俳優陣に混じって違和感なくこなしているということに逆に声優のすごさを感じました。

2.対象層について

これについては各所で言われている通り、あまり広い層に向けて(300館規模で)展開できるような作りの作品ではないのでは?と思います*3。どちらかといえば普段あまりアニメ映画を見ない層よりは、それこそ岩井作品のファンやオリジナルの劇場アニメ作品を普段から映画館に足を運んで見ているような層向けの作品だと思います。とはいえ、興行的な数字が出てくるのは(執筆時点では)これからなので、思わぬ層に波及するかもしれず、未知数なところもあります。

3.キャラクターデザイン、演出と作風の整合性について

あまりにも化物語戦場ヶ原ひたぎとヒロインが似てると言われていたので検索したら確かに似てました。化物語知らなかったので先入観なく見れて逆に良かったかも?

シャフト的演出は今回比較的まだ抑えめではあったものの、他のアニメスタジオだったらより実写に近いような作風になり、本作の方向性が明確になった気もします。ただその話の内容と演出の方向性の若干のミスマッチ感が逆に本作の味でなり、意欲的な部分でもあると思うので、これに関しては難しいところです。

さいごに

最初にネタバレ注意と書いた以上ここまで読んだ人で未見の人はそんなにいないのかもしれないですが、もしPV見て気になったけどレビューサイトなどで低評価だけどどうしようかな…と思っている人がいたらあんまり評価にとらわれずに見ていただきたいです。わかりやすい作品ではないにしても意欲作ではあると思うので。

作品の宣伝をその作品を確実に見るような層にのみ届けるか、広く行うかということについて、作品ごとの適正な興行規模について改めて考える機会になりました。

*1:美少女・14歳の奥菜恵が主演!岩井俊二監督、幻の名作『打ち上げ花火 下から見るか、横から見るか』を岩井監督公式サイトで無料配信! - シネマトゥデイ

*2: if もしも - Wikipedia より。"ストーリーの途中で2つの選択肢「A」と「B」が発生。それぞれを選択し、その結果変化していく2つの物語を順番に、場合によっては交互に描く。"

*3:まあだからこそ普段映画が来ないか来ても数ヶ月遅れなようなところで見れてるわけですが…